一時間目が終わった。
制限時間は10分。それまでに必要な情報を集めること、それが僕たちの使命である。
僕たちは、先生が教室を立ち去ると同時に、まるで打ち合わせをしていたかのように、まっすぐ中鵑里曚Δ惴かった。

中鷦身も、静かなときはかなり静かなほうで、
そこまで会話する必要性が無いときや、話したい気分にならないときは、単独行動をしているようだ。
今日は、その『話したい気分にならない』日なのだろうか、
右足にまだ包帯という骨折の残痕をつけている中鵑蓮一人で一時間目の復習をしていた。
「よう、中鵝
信が声をかける。
僕たちの必要としていることを、メンバーの面々で推測できたのか、
「ああ、昨日の財布の話?」
こっちの用件を見抜かれてしまった。
「昨日は、本当に参ったよ。俺の全財産が盗られちまったんだから」
「全財産って、いくらなのですか?」
「あの財布には、三万くらい入ってた」
「三万!?」
この額に、『今月ピンチ』だとか言い張ってた鈴が、めざとく反応した。
「どうしてそんな大金を、学校に持ってきてしまったのですか?」
「いやー、実は一昨日、新しいゲームが出てさ。家に帰って、あわてて店に行ったもんだから、
 財布を持って行こうとして金が入ってなくて、テキトーに貯金箱からつかみ出したわけよ」
「それが、全財産だったというわけですね」
「そう。全部持って行ってたってことすら気づかないほど切羽詰ってから。いやー、お恥ずかしい」
三人はそれなりに納得しているようだ。
使ったのはゲーム代だから、六千円前後ってとこか。
それでも三万円余っていた。中鵑世辰董∈睇曚北い聖伊が入ってたことに気づかないことはないだろう。
僕は、三人が声を発しないのを見計らって、
「三万円も入ってることがわかってるのに、どうして学校に?」
「いや…持って来るつもりは無かったんだけどさ、兄貴がイタズラで勝手に鞄の中に入れてて。
 俺は学校に来るまでそんなこと気づかなかったよ」
ん?待て、今の言葉……
「学校に来たときに気づいたってこと?」
「そうそう。鞄をロッカーに入れるとき、見つけたんだ」
何か気になる。
学校に来て、中鵑郎睇曚鮓つけた。……ということは、すべき行動が一つ、欠けているな。
「何故、先生に預けようとしなかった?」
三人は、はっとしてこっちを見た。
どうやら、気づいてなかったようだ。三人とも、貴重品はあまり持ってこないし、持ってきたとしても、自分で管理するだろうからな。
この学校は、大切な貴重品は、先生に預ける仕組みになっている。
何らかの理由で財布を持ってきている人たちのほとんどは、朝、先生に預けて、放課後返してもらうことしているわけだ。
そっちのほうが、自分の力では、教室の移動等で完璧に管理できないのだから、安全なのは間違いない。
財布が手元にあるだけでも、迷い無く預けるだろうに、三万も中に入っていればなおさらだ。
「どうして?」
「い、いやぁ……実は、言いにくいんだけど……」
中鵑急に小声になった。聞き取りにくいなぁ、まったく。
「実は、財布を開けてみたら、中に……女の人の裸の写真が貼ってあったんだよね」
……え?
「そんな理由?」
中鵑蓮顔が赤らんでいるようだ。
それに気づいた鈴が、すかさず、
「えへへ〜?自分で貼ってたんじゃないの〜?」
「違う違う!兄貴に話してみたら、どうやら貼り付けたのは兄貴だったみたいで……」
鈴の挑発に、中鵑蓮⊆蠅鯊腓欧気覆曚豹兇辰董⊆己擁護を始めた。

中鵑侶撒はこの辺では有名な進学校の高校生。
高校からの帰り道に、そういう雑誌が捨てられてたのを見つけ、友達と騒ぎあっているときに、このイタズラを考え付いたらしい。
中鵑侶撒は、その雑誌の一部を破いて、中鵑虜睇曚謀修衂佞院鞄の中に忍ばせたんだとか。
兄貴の思惑通り、中鵑漏惺擦悩睇曚傍い鼎、中を開けてビックリしたわけだが……
中鵑侶撒は、失敗、というか、一つ余計なことをしてしまったみたいで、
なんと、粘着力の弱い糊を使ったつもりが、実は強力瞬間接着剤を使ってしまっていたのだ。
しかも、一部だけ接着していたのならまが剥がせるものの、切り抜き全体にべったり糊を塗ってくっつけていたものだから、
学校で財布の存在に気づいた中鵑蓮△呂そうにもはがせず、先生に預けようにも預けられず、そのまま放置していたという。
「俺の兄貴、結構いい高校通ってるのに、天然バカなんだよ。
 昨日、笑いながら謝ってた。笑いごとなんかじゃないのに」
いきさつを話している中鵑寮漆Гら、怒り心頭である様子がひしひしと伝わってきた。
「結局、中鵑侶擦気鵑余計なことをしたから、そのまま財布が盗まれてしまったってことなんだな?」
「そう。財布のことは、家族に言うと面倒なことになるから、言ってない。
 もちろん、三万が盗まれたことも、兄貴は知らないから、謝らせようにも謝らせないんだよね」
なんともかわいそうに。中鵑浪燭砲發靴討い覆い里砲福
「これくらいで、いい?参考になった?」
「うん、ありがとう。あ、でも、最後にもう一つだけ」
一番重要なことを思いついた。もしかしたら、犯人を絞れるチャンスになるかもしれない。
「財布が盗まれる前、財布に三万円入っていたことを、誰か知ってた?」
「えーと、体操服に着替えてる間、有ちゃんとか、仲谷とかに話しはしたけど……」
何!?
「話、したの?有井たちに?」
「いやー、ついしちゃったんだよね。切り抜きのことまでは言ってないけど。
 『今日鞄に財布入ってんだけどさ、間違えて三万も入れて持ってきちゃったよ〜』って、笑い話っぽく」
それって……その二人に絞れるんじゃないか?犯人。
「あ、悪いけど、有ちゃんたちを疑っても無理だと思う」
「え、なんで?」
「俺は有ちゃんたちと教室を出て、授業が終わった後も一緒に戻ってきたから、そいつらが盗むのは無理ってこと」
ああ、そうか……。くそ、僕としたことが、何も考えずに一度期待してしまった。
「それに、俺が財布のこと喋ってるとき、思った以上大声だったらしいんだよね。
 もしかしたら、他に教室にいたみんなにも聞こえてたかも」
……えっ?
待てよ。これって、かなり重要なことじゃ……
「ってか、これものすごく重要じゃねえか?」
今まで黙って聞いていた信が声を上げた。
僕と同意見だ。長い付き合いの賜物なのか?これも。
「ありがとう、中鵝ものすごく参考になったよ」
「え?あ、うん。がんばってね〜」
もうすぐチャイムもなることだし、僕たちは、中鵑寮覆ら離れた。
「ねぇ、何で重要なの?」
鈴が問いかけてくる。
わかりやすく解説したのは、信だ。
「いいか?財布を盗んだやつは、財布に三万入ってることを知っていたから、盗んだんだ」
「うん」
「財布に三万が入っていることを知ることができるのは、中鵑大声で自爆していたときしかない。
 つまり、それを聞いてるやつらしか、盗もうって気にならないわけ」
「あ、ってことは、その聞いていた人の誰かが犯人……」
「そーいうこと」
僕たちは、さっさと着替えてさっさと教室を出て行ったから、
盗まれる元凶を大声で撒き散らしていたなんて、ついさっき聞くまで知らなかった。
「少なくとも、女性は免除ですね。女性の方々は、あの騒動が起こるまで、財布のことすら知らなかったのですし、
 実際に盗もうとすると、男性の方が更衣している2-3へ入らなければいけないのですからから」
「もちろん、あたしたちも」
確かに、そうなる。
ということは、少なくとも犯人は男であることが確定したわけだ。
「俺たちがグラウンドに出たときは、まだ数人しか外に出てなかったな」
「うん。その人たちの名前、覚えてる?」
「ああ、5人くらいだったからな。それくらいなら覚えてる」
さすが信だ。信から、そいつらの名前を聞き出した。
2-3の35人から、女子の人数を引くと、19人になる。
そこから、信の証言によって名前があがっている―三万が入っていたことを叫んでたときに教室にいなかった―やつらと、
谷村、中鵝∨佑蕕魄けば、残り10人か。
「だいぶ絞れましたね」
「うん。絞れたのはかなりの進展だけど、ここから誰かを指摘しなきゃいけないんだよね」
犯人が単独犯なのか複数犯なのかも、まだわかっていないから、まだなんとも言えないが……
対象が10人なら、落ちていた鍵を、偶然にも拾ったやつを探すのは、案外たやすそうだな。


  

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