12月24日。
赤い服を着たおじいさんが子供達への贈り物をせっせと準備している間、
赤い鼻がライト代わりのトナカイは世界中を回るため、体力を養っている。
そんな中で人間は、まるで祭りのように飾り付けをし、ムードを出し、きゃいきゃい騒いでいる。
今日は人々が心待ちにしていた日でもあり、恋人達にとっても大切な日だということを、祥は知っていた。

記念日前日に騒ぎ立てるのに当日になるとすっかりさめてしまい、さっさと片付けをしてしまう
日本人にいい加減さを感じつつ、その法則に便乗するため祥は、出かける準備をしていた。
コードでつながれ机の上に置かれている携帯電話は、ランプを消灯して充電完了の合図を送り、ハンガーには祥の一番お気に入りのジャケットがかけられている。
余裕があるくらいの金額を財布の中に入れ、一通り準備を済ませた祥は、ベッドの上に横たわり、「きよしこの夜」をかけた。
きよしこの夜は祥が大好きな曲であり、季節はずれでも年中聴いている。
特にクリスマス前後では一日に何十回と聴いているものの、祥には飽きが来なかった。
しばらく聴いていると、家のチャイムが鳴り、すかさず母親が部屋のドアをノック。
優花が来たという証拠だ。
祥はジャケットを肩にかけながら、家のドアを開けた。
「ごめん、遅かった?」
そこにいたのは優花だった。
純白のマフラーとコートは見事にマッチしており、白く小さな手にはクリーム色のバッグを持っていて、黒いショートヘアの中で、大きくつぶらな瞳を使ってこちらを見つめていた。
今日はまた一段とかわいく、祥は思わずよろめきかけた。
「うわっ、大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫。優花見たらあまりにもかわいくて……」
「えっ……こういうときにどう反応すればいいのかわかんないんだけど。」
「ははは。」
靴を履き終えた祥は、玄関を抜け出した。
外はもう夕焼けも残っておらず、薄暗い空に雲が重なりを見せていた。
「じゃ、行く?」
「うん。」
祥と優花は手をつなぎ、住宅街の歩道を歩き始めた。


 

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