しばらくウインドウショッピングを楽しんでいると、前方から祥に手を振る人が見えた。
そのまま二人の方へ寄ってきた人物は、こうはじめた。
「おや?新婚さんのハネムーンはこんなところでいいのかな?」
「結婚してねぇよ。」
祥が反論したその人は、二人のクラスメートであり、幼馴染でもある、隆だった。
「お前達がどっからどう見てもカップルに見えるのは間違いねぇな。つか、元々カップルだし。」
「何だ?邪魔しに来たのか?」
にやけながら冷やかす隆に、祥は冷ややかな目で対抗した。
「それとも何か?何が悲しくて彼女いないから妹連れて買い物しに来たのか、ってか?」
「!……むかつく言い方だな。」
「はは。ま、冗談だけどな。」
隆はにやけ顔をしまい、
「彼女がいないから寂しいなんて、別に思ってねぇし、お前らを邪魔しに来たわけでもない。」
と、隣にいる女の子に指差し、
「こいつが、見たい映画があるなんて言ったから、今日は親いないし、付き合ってるだけだよ。」
隆が指差した女の子は、隆の妹であり、今は優花と話をしている。
「今晩は、みーちゃん。」
「どもです、優花ちゃん。今日もラブラブだねっ。」
「そっ、そういう事は言わないの!」
優花は顔が赤くなっているようだった。
「で、みーちゃんは何の映画を見に行くの?」
その質問に対し、中一の妹は映画の名前を告げた。
「あ!それ私達が見たのと同じ映画だね。」
偶然だった。
「えっ、そうなの?面白かった?」
「うん。特に最後のところが……」
「あっ、それ以上言わないでね。」
とっさに妹が突っ込んだ。
隆は、妹から目をそらし、祥に向けた。
「とまぁ、こんな調子だから妹と二人って訳だ。」
「ふーん。」
祥は軽く笑い、
「ところで、映画はいつからなんだ?」
「次の回だから、もうすぐだ。そろそろ行くわ。邪魔して悪かった。」
そう言い、妹を連れて映画館のほうへ足を進めようとして、
「優花とやましいことはするなよ!」
と言い残して去っていった。
「別にそんなことしねぇよ。」
妹と足を揃えて歩く隆の背中を見ながら、祥は呆れ声でつぶやいた。
「じゃ、私達もご飯食べに行こう。」
「ああ。」
優花は祥の前をリードし、足早にフードフロアへと入って行った。


  

inserted by FC2 system